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半分こ
それでも、私たちは目を閉じて、早く大人になりたい気持ちを我慢する。
まだ、きっと後何度かは、そんな夜を過ごすんだと思う。
不思議だな、私は戸田くんのことがずっと気になっていたけれど、運命が動き出したのはここ数日で、ジェットコースターみたいにゴールにたどり着いてた。
あ、一緒に遊園地も行きたいなあ。
あんまり、好きじゃない?
そんなことない?
一緒に行ったら、楽しいよ、何か新しいアイデアが浮かぶかも。
もしもこれから、戸田くんが何か苦しいことがあって迷ったり悩んだりしたら、半分こしようね。
私も、一人で抱え込むことはやめて、戸田くんに話すよ。
とても疲れているはずなのに、ちっとも眠れなくて、だけどまるで夢みたいな時間はあっという間に過ぎて行く。
「お弁当作るのも楽しみ。好きな人に喜んでもらえることするって、こんなに嬉しいんだね」
「僕は、香歩に、何をしてあげたらいいかな」
「一緒にいられる時に一緒にいてくれたら、それだけでいいんだ」
「何か、夢はある?」
「戸田くんの夢は?小説家?」
「…なれるか、わからないけど、そうだね」
「じゃあ、私の夢は、小説家夫人。あれ?小説家夫人て、言う?」
あ、笑ってる、戸田くん。
声を上げないようにしてるけど、とうとう吹き出した。
このマンション、壁が薄いとか?どうして小声で笑うの?
香歩に失礼だと思ったから。
そんなことないよ。
可愛くて、笑っちゃった。
可愛くても笑うの?
僕もはじめて知った。
別に誰にも聞かれていないし、おかしな会話でもないのに、内緒話をするみたいにヒソヒソと話す。
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