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味方でいてくれる人
頭が真っ白になってしまって、唇がわななく。
違うの、と呟くけれど、すぐに、違わない、とまた自分の声が追いかけて来る。
どうなってしまうの?
もしもバレてしまったのだとしたら、私は学校を退学になるのだろうか?
そして、そうだ、家族が哀しむ。
…戸田くん、せっかく私の心を元気にしてくれたのに、ごめんなさい。
もう、一緒にいられなくなってしまうのかな。
だって、援助交際をしたなんて噂が付き纏う彼女なんか、いない方がいいに決まってる。
ドンドン!と、背中で保健室のドアを誰かが強くノックする音で、思わず腰が抜けてしまって床にお尻をついてしまった。
い、痛い、受け身も取れなかったので、足首が内側にがくんと折れた上に、体重全部が落っこちて来て、心臓が後からやっと追いついて来た感じ。
「あ、…あ、…えっと、はい、います。せんせ、い?」
「あ!良かった、いたんだね。開けるよ?」
「…戸田、くん。…でも、先生いなくて。私、私、…」
「大丈夫。落ち着いて。…でも、その反応だと、だいたいどうなってるのか、予想ついちゃったかな」
静かにドアが開いて、そうっと戸田くんが入って来る。
後ろ手で閉めて、ついでに鍵をしたようだった。
心配そうな表情で、私の横にかがむと、顔を覗き込まれる。
…かたまってしまっている私を見て、ちょっと考えるように首を傾げると、その優しい手の平がひたいに触れて前髪をかき上げ、ちょん、と軽い口づけをくれた。
「…?」
「ね、世界中のみんなが香歩の敵みたいに感じても、僕のことだけは信じてよ。…大丈夫、ね?」
「…う、うん、うん!…戸田くん、私、もう、…ダメなの?」
「…ホノカさん、だったよね。彼女が今、校長先生と話してるよ。香歩は、あの日一緒にいただろ。誰か、見てたみたいだね。…まあ、だから好機の目を向けられてるだけ」
「でも!本当に何かあったのは私で、ホノカは先に帰ったんだよ?」
「あのカラオケで、会員カードを出したのはホノカさんみたいだね。カラオケの店員が、…飛び出してった香歩の様子がおかしかったから、会員カードに登録されてたホノカさんに連絡してくれたみたいだよ。…それから、学校にもね」
女子高生が二人と年上の男性が一人の客がカラオケにやって来て、先に一人女子生徒が店を出た。
その後、個室では女子高生一人と、男性の二人がしばらくの間残される。
そして、泣きながら、ひどい顔で店を走って出て行った、女の子。
つまり、私。
…どんな風に見えただろう、それはもう、察することが出来たのだろうな、だから学校にまで連絡が行ったのだ。
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