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真実と裏切り
「香歩!ルミだよ。戸田くんも、いるよねー?いいかな、開けてもらっても。ちょっと、荷物があって」
「…荷物?」
「はい、ルミさん。…それは?」
何も新しい情報なんか欲しいと思えない。
だって全ては絶望的な内容であるに違いないのだから。
そんな風に思って、ブルブルと震える腕を自分でなんとか抑えている間に、戸田くんが少し移動して、ドアを静かに開く。
「よっと。…んー、ホノカの、今日の荷物。帰るんだって」
「…ほ、ホノカ、…ホノカは、…?」
「校長先生は、ホノカのご両親に連絡を、って。一応ね、…したみたいなんだけど。二人とも、仕事で夜の8時を過ぎないと帰って来られないそうなの。…少し抜けるのも無理ですか、って担任も食い下がったんだけど、出来ない、の一点張りだったらしくて。…秘密ね、これ。担任から、ホノカの日頃の行動について聞かれたんだ。教えてもいいけど、そっちも状況教えて下さいって、交換条件で聞いたの」
…ホノカ。
もしかしたらホノカは、泣いていたりなんか、しないだろうか。
ふと、そんなことを考えてしまった。
でも、年上の彼氏がいて、いつも堂々としていて、なんでもそつなくこなして、自分は損をしないように上手く生きてる、そんな風に見えるホノカが、今更、親が迎えに来られないと言うだけで、傷ついたりするだろうか。
ー するかもしれないじゃん。
「ルミ!!ホノカは、…一人で帰るの?」
「ううん。校長が送ってくって。…もしかしたら、しばらく家で、ご両親を待つつもりなのかな。それはないか。まだ夕方にもなってないし」
「校長先生は、すごくいい人だよ。先生に、イイヒトとか言ったらダメかもしれないけど。…きっと、ホノカのことが心配なんだよ」
「…僕たちに出来ることは、…何もないかな。ここから先は、もう大人が出て来ちゃったし、取り返せないね」
冷静な戸田くんの言葉に、私もルミも思わず口をつぐむ。
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