パニック

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パニック

 チャイムの音を聴き逃していたようだった。  壁掛け時計に目をやると、すでに授業ははじまっているであろう時間だったし、廊下からも人の気配は感じない。  「…いい?香歩、何か聞かれても、カラオケしてる最中で具合いが悪くなったから、急いで外に出た、って言うんだよ。それ以外は、言っちゃダメ。ブレたら、嘘だってバレちゃうからね」  「…ルミ。…わかった。私、でも、本当は、私、私、だって、私!!!」  「ダメだ、ルミさん、誰か先生呼んで来て!出来れば、養護教諭の先生!」  「きゃあああああああああああっ!!!!!」  混乱していたけれど、だけど、戸田くんがいてくれた。  ルミだって、味方でいようとしてくれた。  だけど、ホノカは今ひとりぼっちで。  そのホノカは、私のことを…、売ったんだ。  お金で、売ったんだ。  私は、そのお金をもらったの、確かにこの手にあったの。  もう、もう、もう、わかんないよ。  嫌だよ。どうして。壊れちゃうの。なんでなの。助けて。  わけわかんないの。  こうなっちゃうの。  逃げ出したい。  悲鳴をあげて、頭を両腕で庇って、私は冷たい床にふせって縮こまっている。  まるで芋虫みたいに。  ちっとも綺麗じゃない。  蝶々みたいになれたと思ってたのに。  楽しそうに、優美に、踊るように、ひらひらと自由に飛べたと思ったのは、全部夢だったんだ。
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