もしも

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もしも

 「うちは共働きだったからね。運動会や、授業参観に、ワタシが行くこともあったんだ。見たくない光景のオンパレードだったよ。認めたくなかったんだ、ワタシは。同じクラスの生徒が、娘にバカだと言う。だけど娘は、その意味がわからない。こだわりでがんじがらめな娘は、チャイムの音に耳を塞いで呻く。授業時間が一分でも過ぎれば、憤って声を荒げ、時計を激しく指さして泣いていた」  私は発達障害だけど、ADHDだ。  ASD、自閉症スペクトラムの特性には詳しくないし、知的障害のこともよくわからない。  だけど、もし、もしも校長先生の言うような行動を取るクラスメイトがいたら、どう思うかな?  不思議に感じるかもしれない。  どうしたの、と優しくたずね、不快な気分を解決させるお手伝いなんか、出来ただろうか?  友達に、なれただろうか?  「せ、せんせ、...あの、なんで私に、娘さんのお話を、」  「学校から、困っていると言われて、養護学校を勧められるまで、ワタシは娘がに、ハッキリとは気がつけなかったんだよ。情けないね、ワタシは教師だったのにね」  「先生...?」  声は弱々しく感じたけれど、それでも校長先生は堂々としていた。
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