73人が本棚に入れています
本棚に追加
もしも
「うちは共働きだったからね。運動会や、授業参観に、ワタシが行くこともあったんだ。見たくない光景のオンパレードだったよ。認めたくなかったんだ、ワタシは。同じクラスの生徒が、娘にバカだと言う。だけど娘は、その意味がわからない。こだわりでがんじがらめな娘は、チャイムの音に耳を塞いで呻く。授業時間が一分でも過ぎれば、憤って声を荒げ、時計を激しく指さして泣いていた」
私は発達障害だけど、ADHDだ。
ASD、自閉症スペクトラムの特性には詳しくないし、知的障害のこともよくわからない。
だけど、もし、もしも校長先生の言うような行動を取るクラスメイトがいたら、どう思うかな?
不思議に感じるかもしれない。
どうしたの、と優しくたずね、不快な気分を解決させるお手伝いなんか、出来ただろうか?
友達に、なれただろうか?
「せ、せんせ、...あの、なんで私に、娘さんのお話を、」
「学校から、困っていると言われて、養護学校を勧められるまで、ワタシは娘が健常者ではないことに、ハッキリとは気がつけなかったんだよ。情けないね、ワタシは教師だったのにね」
「先生...?」
声は弱々しく感じたけれど、それでも校長先生は堂々としていた。
最初のコメントを投稿しよう!