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ホノカの秘密
何十年も教師をして来て、父親をこなして、そしてただの生徒の中のたった一人でしかない私に、何か大切なことを伝えようとしてくれているのを感じる。
「...養護学校に転入してからの娘は、明るく、楽しそうで、...彼女に合う環境がどれだけ必要だったのかを知ったよ。...岩井さん、この学校には支援級はないけれど、発達障害を持つ子供たちを受け入れているんだ」
「はい、私、だからこの学校にしたんです」
「そうだね。ワタシも歓迎した。そして、今でもその気持ちは変わらない。合理的配慮が必要なら、いつでも求めていいんだよ」
「...私、退学に、ならないんですか?」
「なるわけないだろう。君たちには、守って導いてくれる大人や、安心して学べる居場所が当たり前に必要なんだから」
やっと、私は身体を起こすと、ポカンと校長先生を見つめた。
「ほ、ホノカは、...」
「...どうやら、何日も自宅に帰っていなかったみたいでね。ご両親も、...そのことを黙認していたみたいだ。これは、学校だけで取り組める問題ではないんだよ。浅野さんは、まだ子供で、やはり守られるべき存在で、導いてくれる大人が必要だ」
そんな。
何も知らなかったよ、私。
じゃあ、ホノカは、どうなるんだろう?
学校には、変わらずに登校出来るのかな?
でも、親に放置されていて、援助交際をしたがる友人を持つような彼氏の家に入り浸っていることは、ホノカの行く先の範囲を狭めるに違いない。
ゆらり、と瞳が揺れて、校長先生の姿がぼやけた。
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