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万事休す
何とかして欲しい、と懇願する為に口を開いた途端に、エーデルワイスが鳴り響いた。
もう、一限目が終わってしまったらしい。
きっと、休み時間の間に、戸田くんが来るだろう。
私のことを、心配してくれている。
「せ、先生!ホノカは、悪くないです。私も、よくわからなくて、止められなかったから、だから」
「うん?」
「...、な、なんでもないです!あの、先生はどうしてホノカを呼び出したりしたんですか?」
「戸田くんにも話したけれどね、カラオケ店の店長さんが学校に電話をくれたんだよ。聞いてないかな?」
「き、聞きました。私が、...具合いが悪くなって、走って帰ったのを見て、心配して下さったんですよ、ね?」
危ない危ない。
校長先生は真実を知っているものだとばかり思って、自分が男性と過ごし、お金を受け取ったかことを話してしまうところだった。
どうやら校長先生は、私に起こった出来事には勘づいてないみたい。
だとすると、ホノカは一体、どんな作り話をして誤魔化したのかな?
カラオケに一人残された男性の存在は、なかったことにされてるってこと?
「隠し事が下手なんだな、岩井さんは」
「...!!」
万事休す、かもしれない。
だって、校長先生は、もう微笑んではいなくて、眉を寄せて苦い表情をしている。
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