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私のヒーロー
ガラガラガラ、とけたたましい音を立ててドアが開いたので、私は急いで立ち上がると、助けを求めるようにそちらに駆け出した。
「香歩!」
「戸田くん!!」
恥ずかしいだとか、人前だとか、キャラじゃないとか、頭からすっぽり抜けていて、ただただ戸田くんが来てくれたことが嬉しくて、心強くて、私は彼に飛びつき肩に顔を埋める。
「いじめたりしないよ。ワタシはこの学校の校長だ。君たちを守りたいから、話をしているんだよ」
「...先生、ごめんなさい。でも、何か私に、伝えづらいことが、あるんですよね?」
「そうだね。だけど、これは罰則ではないよ。一週間の停学、...受け入れてもらえるかな。心の休息の時間にあてて欲しいんだ」
ぎゅう、っと、戸田くんが私の身体を抱きしめて、それから耳元に小さな声で「YES」と呟いた。
きっとそれは、「はい、と言って」と言う意味だろう。
だけど、私が停学だなんて、お母さんやお父さんはどう感じるかな?
理由だって、明かされてしまうのかな?
そんな。そんなそんな。
大切に、されて来たの、私。
なのに、汚してしまったの、かなしい、...かなしいよ、戸田くん、ねえ、戸田くん。
「...は、い。受け入れ、ます」
「ありがとう、岩井さん」
「先生、岩井さんは、早退をした方が良いと思います。顔色も、真っ青だし...」
「そうだね。戸田くん、頼めるかい?」
「わかりました。...先生、ありがとうございました」
「岩井さん、大丈夫だよ。君は、巻き込まれただけなんだからね。一週間後、また元気な顔を見せてくれたら嬉しいよ」
ぼんやりとしか聞こえない校長先生の言葉に、私は確信した。
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