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エーデルワイス
机に広げたノートに、真剣にビーズアクセサリーの新しいデザインを考え、色付きのペンで絵を描いていた。
私は筆入れを二つ持っていて、一つは鉛筆と赤青ペンと消しゴムの入っている、おベンキョウ用。
もう一つの、大きくてピンクの方は、32色の水性マジックが詰まっている、私のヒラメキ用。
美しく描く必要はないのに、ビーズの一粒一粒が光のあたり具合いで様々な色合いを含み、そして放つことを知っているが為に、周囲の全ての刺激をシャットアウトするほどに集中していたみたい。
ー 教室に、エーデルワイスが流れる。
おっとりした優しいリズムじゃなくて、tuttiに出遅れたピアノが慌てて奏でてるみたいな、ちょっとやかましいやつ。
一度も授業を聞いているフリをしていなかったことに気づき、ハッとして顔を上げる。
数学を担当している教師はとくに私のことを見てもいない。
もう、諦められてしまっているのかもしれないな。
ゴメンナサイ。
申し訳なくは思うけれど、興味がないことに向き合うと、どんなに「いけない」と思っても欠伸が出る。
だから私は、起きていようと、再びノートに視線を落とした。
「はい、では終わります。夏休み明けにテストがありますからね」
終了!テスト?まだまだ先じゃん。大丈夫大丈夫。
ノートや教科書、バラバラに散らばっているペンたちを筆入れにしまって、机の引き出しの中に突っ込む。
今日もこりずに、私は隣のクラスの戸田くんのところへ向かう気満々だ。
この高校は、4時限目の終わりを知らせるチャイムだけは、キーンコーンカーンコーンではなくて、私の背中を押す、せっかちなエーデルワイス。
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