彼の素敵なとこ

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彼の素敵なとこ

 隣のクラスの教室の前の扉が開けっ放しになっていたので、手のひらをベタっとくっつけて、体は隠して顔だけをひょこっと出すと、中を覗き込む。  私は1年3組で、戸田くんは2組だ。  目が悪いようで、黒縁の上下幅の広くないスクエア型の眼鏡をかけている上に、席も教壇の真ん前にしてもらえるように、担任に頼んでいるようだった。  だって、席替えをしたのだな、と雰囲気でわかるようなことがあっても、彼の机はいつだってそこだったからだ。  んー??おっかしいなあ。  傾けていた頭を戻して、体の方も入り口の前に持って来ると、他の生徒の邪魔にならないように内側へ入って扉に寄りかかった。  周囲を見渡してみたけれど、見慣れた戸田くんの姿を見つけることは出来なかった。  いわゆる際立って目立つ人、ではなかったけれど、私にかかればいくらだって素敵な部分の特徴をあげ、数えることが出来る。  そりゃあ、見た目に限定するならば片手で足りてしまうかもしれないけれど、それ以外も付け足して良いならば両手では足りない。
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