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闇夜と輝く星
楽しいティータイムはあっという間に終わって、夜になっていた。
夜が来る度に思う、また一日が終わる。そして桜の心がどんどん離れていっちゃう。一人になっちゃうんじゃないかって。心が真っ暗闇に包まれていく。
「芹ちゃん! 送っていくっす!」と桜のお兄さんは声をかけてくれる。
「大丈夫です、すぐそこなので」
「俺が送っていく。帰り道だからな」とヒーロー先輩。
「それなら安心っすね! でもちょっと待っててっす」
桜のお兄さんは部屋へと急ぎフカフカのマフラーと手袋、耳あてを手渡してくれる。
「ありがとうございます。あれ? なんだか温かい?」
「あ、えっと部屋のコタツで温めていたっす」とはにかんだ笑顔を見せる。
「え? コタツに? 臭くない?」と匂いを嗅ぐ、桜。
「だ、大丈夫っす! ちゃんとファブったっす」と慌てる桜のお兄さん。
「へへ。いい匂い、あったかーい」と言って借りた装備品を身につけ、マフラーに顔をうずめてみる。
ふふ。知ってる、この香り。桜のお兄さんの香水の香りだ。
ヒーロー先輩はマフラーの裾を掴み、香りを確認したかと思うと「ふーん」と言った。
ドアを開けると冷たい空気が入り込む。
「ほれ。ここ、あったかいぞ」とヒーロー先輩はコートのポケットをパタパタとさせ、ホッカイロをチラ見せする。どうやらそこに手を入れろということらしい。
「先輩、お世話になります」と先輩のポケットに手を入れる。
本当だ、あったかい。思わず顔がニヤけてしまう。
桜のお兄ちゃんといい、ヒーロー先輩といい、本当にステキなお兄さんたち。
妹がいるお兄さんたちはこんなに優しいんだなって思うと、私もお兄ちゃんがいてほしかったなと思ってしまう。
空を見上げると、雲一つない晴れ渡った星空が広がっていた。
オリオン座を見つけて「先輩、オリオン座です!」と空を指さすと。
「そうだな、スバルもみえるな」と返してくれる。
これは星の話ができる人だな! と思い、話を続けることにする。
「冬の星と言ったらオリオン座とスバルですよね! あとは、ベテルギウス、シリウス、プロキオン! 冬の大三角も見えますね! 三角形って人の輪みたいにみえません?」
「(小さな声で)三角関係……」
「え?」
「そうだな、人と人が手を繋いでいるようにみえるな。円と縁って感じにな」
ヒーロー先輩のその一言で少し気持ちが軽くなった。一度繋がった縁はそう簡単に切れない。だから距離が離れても繋がっているんだろうなと思えた。
「ですよね! 共感できて嬉しいです!」
「ああ」
それからヒーロー先輩と星座の話をしながら家まで送ってもらった。
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