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「花が?」
「匂いからしてジャスミンですよ、どっかで摘んできたんでしょうね、それをわたしに吹っ掛けて、さも楽しそうに、ケタケタ笑って、わたしを追い抜いていったんですけど、その、追い抜く瞬間に、ですね、そう、三人いましたね、三人のオンナのコの真ん中にいたコが、レイラだとわかったんですよ」
「レイラ!?」
「ええ」
「でも、レイラって、どの…」
「もちろん、フィナーレで相手を務めてくれた踊り子のレイラですよ、連隊長の娘さんではありません」
「そりゃ、そうでしょう、あのエルゴレアのレイラさんが、シディ・フレッジにいるわけ、ないですものね」
「いや、それは分かりませんよ」
団長が車外を指さしていった。先日、挙動不審で捕まったリゾート施設のある松林にさしかかったところだった。
「ほら、それこそ連隊長一家で、あのモレッティの館に滞在してる、てこと、大いにあり得ることじゃないですか」
「なるほど」
「でも、わたしが、踊り子のレイラだって、確信したのはね」
団長は、車外を指した指を自分の眉間に向けると、いった。
「ここ、この辺りなんです」
「目…ですか?」
「というか、瞳というか、そうですね、視線、いや眼差し、でもないな、とにかく、目とか瞳とかマツゲとか眉毛とか、この辺りにまとまっている全体から発散される、どこか油断ならない、シャープな威力、とでもいうのかな」
「好奇心?」
「それもあるけど、それだけじゃなくて、こう…」
「猜疑心?」
「そうそう、まさにその二つですよ、うちのルーナや連隊長のレイラちゃんには、ただただ天真爛漫な心、みたいなものがあって、それがいつもキラキラ輝いているんですけど、あのレイラには、ね」
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