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翌日曜日の昼近く、大使館から連絡が入った。
「例の高所作業者殺害犯の件ですが」
武官だった。
「法務省刑事局から公判日程と在留邦人の保護要請が届いているのですが、ご存じですね」
「はい」
有無を言わせぬ威圧感があった。
「委細、承知しておりまして、適切に対応すべく準備しております」
「公判には齟齬のないようにおねがいします」
「もちろんです、で、武官は?」
「公判に立ち会い、警察と合流の上、イミグレまで補導するように、との要請です」
「イミグレまで」
「そうです」
「こちらでは、いまのところ、拘置所から本国まで身元引受人一名の同行を予定しておりますが、さらに警護要員を見込んでおく必要はあるとお考えですか?」
「どうでしょう、なにしろご老体で衰弱しておられると聞いてますし、その件に関して、本省からは特に言及はありませんので、みなさんでお決めになったらいかがですか」
つまり、不必要ということだ。
「了解しました、とにかく、移送日程確定次第、即、連絡いたします」
同じ日の夕刻、本社経由で現場主任からの返答がテレックスで届いた。来週の週明け土曜日十時の公判廷に主任が被告代理として出廷する、当日判決が下り次第、執行機関の職権が発動する各種指令に基づき、トビ職派遣事業主を身元引受人として拘置所出所、アル国出国を経て本国帰還までの身柄の移送に随伴させる、以上の準備は万端手配済みにつき、緊急衛星回線用受話器を持参する、ひいては移動手段と宿泊の便宜お願いしたい、とのことだった。
「団長、やっと目途がたちましたね」
ホテルへの帰り道、助手席の団長に声をかけた。
「これでトビ職生還計画、一件落着ですよね、よかった、ほんとによかった」
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