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スキとスキとスキの味
「恋がしてみたいの」
親友の万理沙が突然言い出した言葉に、あたしは面食らった。中学二年生。恋に恋するお年頃なのは間違いない。最近は可愛らしい少女漫画もたくさん読んでいるようだし、イケメンアイドルが主演のドラマもよく話題に登る。あんな感じの彼氏が欲しいとか、あんな恋愛に溺れてみたいとか、まあそういう妄想をしてもおかしくはないだろう。
ただし。
「だから、上手な告白の練習をしてみたいの。薫子ちゃん、付き合ってくれないかな」
「待て待て待て待て」
何故そういう方向に行くんだ、とあたしはつんのめりそうになったわけで。
うまく説明できないが。恋愛というやつは“恋をする”ことのそものが目的ではないはずである。あくまで、好きな人と仲良くなるための手段的なやつではなかろうか。
まあ、何が言いたいのかと言えば。
「万理沙ってばさ、好きな人いんの?」
「それがいないんだよねえ……どうしよう薫子ちゃん」
「いやいやいやいや本末転倒じゃん!好きな人いないのに恋愛してみたいとか、告白の練習とかどゆことよ!?まず、誰かを好きになってからそういう相談をするべきだと思いません?」
「えー」
「えー、じゃないよえー、じゃ。え?あたしがおかしいの?変なこと言ってるのあたしの方なの、ねえ?」
天然ボケ、ここに極まれり。あたしは頭痛を覚えるしかなかったのだった。
そう、恋に恋するお年頃、な万理沙には非常に大きな問題があるのである、
好きになる相手、の理想が高すぎるのだ。ハードルを上げまくってドツボにはまると言うべきか。
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