王女様とボク

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「―——助けてくださって……、ありがとうございます」  いかにも非力そうな少女が身体を小さくしながら私に感謝の言葉を告げた。  怯えているというよりは、ただの小心者のようだ。  誘いを断るのが下手で苦労するタイプに違いない。 「いいのよ、それも私の仕事だからって言うのは嘘だけど、あなた、シカリア王国から来たんでしょ? 一人でいるところを見ると難民かしら?」 「いえ……、”旅人です”」  ”旅人です”と言った少女に私は驚いたので詳しく話を聞くために、強引に連れ出して昼間から開いている酒場を訪れた。  あえて不人気な店を選んだだけあって、ほとんど客もおらず、話すには持ってこいだった。  いや、不人気とはいうのは本当は冗談で”高いメニュー”しかないため閉店待ったなしな状況にある、店舗なだけなのだが。  それでも注文を好きなだけすると物凄い勢いで店主から感謝をされたので、逆に申し訳なかった。 「私の奢りだから遠慮なく食べて」    最初は遠慮がちだったが、私が気にせずに食事を始めると、それを見て少女も食べ始めた。食べだすと止まらないところを見ると、空腹だったようだ。    少女の名前はエリサといい、昨日この王国に着いたばかりの隣国にあるシカリア王国からの旅人らしい。  あそこは今、内戦状態にあるから難民かと思ったがそういうわけではないらしい、どこか秘密を隠しているのはすぐに察したので、私は自分から身分を明かして警戒を解くことにした。  もしかしたら、この子は”運命の人”かもしれない、可愛らしい表情や同い年であるところに惹かれて、自然と気を許しながら思った。 「私は”サリア・ダスカルタ”、この国の王女なの。  あなた旅人なのよね?  お願い!! 私をここから連れ出して!!  追われているの、私は行かないといけないところがあるの、だから、お願い」  私はすぐに駆け出す気持ちだった。  それでも一人は心細いから、こういう出会いをどこかで願い、期待していた。  一人だったら決意も鈍って、また王宮へすぐに連れ戻されてしまうかもしれない、だから……。 「実は、僕には秘密があるんだ」 「それは、旅の目的と関係があること?」  私は迷っているような複雑な表情をするエリサに聞いた。 「一応、関係はあるけど、そういうことではなくて、僕は……、本当は”男として生まれたんだ”」  少女から衝撃的な言葉が出たことで私は心臓が飛び上がりそうになった。
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