王女様とボク

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「えっ? !どういうこと?! シカリアは女民国家でしょ? それって…、あなたは一体…」  シカリア王国の国民は研究職などを除けば、原則女性のみで構成されている。  男性の子どもを妊娠した場合、国民である以上、事前の人工中絶が義務付けられている。  それに、長年ホルモン制御され続けた結果、女性妊娠率は99.5、男性を妊娠する確率はおよそ200に一人にも満たないと言われている。 「僕はシカリア王国の王子、エリサ・ベレスティーなんです。  だから、まだ生き残ることを許されているんです。  ですが、いずれ選ばねばなりません。  男性として生きるか、女性として生きるか。  それは、現在内戦状態に陥っている国家の行く末も左右させうることです。  だから僕は一度、争いの地を離れ、世界を見聞して回ることにしました。  僕があの国にいるだけで、スキャンダルとなる火種となってしまうので」  それが全ての真実。  エリサに対して感じていた違和感が全てスッと頭の先から消えてなくなっていった。  内戦構造自体が複雑で私も現状を知りながらも、見ないフリをしてきたが、私が思っていたより状況は深刻と考えた方がいいのかもしれなかった。  成人前にどちらの性を選ぶか、そんな選択を迫られている人生がエリサにとってどれほど悩みの種となっているか、心底計り知れないものだが。  やはり、これは”運命の出会い”だったのだ。 「せっかく話してくれたんだから、私の事情も説明しないと不公平よね……。  許嫁がね、いるのよ…私には。私は最初聞いたとき、その人に会ったこともなければどんな人柄なのかも知らない……、許嫁となった経緯さえしらないし、反対してもまともに取り合ってもらえなかった。    私は……、外交のためのコマにされたのよ…。  それは両親やその周りから話しを聞けば聞くほどよく分かった。  父も母も、国家間の円滑な交流を優先していて、私の気持ちなんて一つも考えてない。    私にはわからない、自分がどうするべきかも、どうあるべきかも、何が正しいのかも。  ただ、こんな身勝手に私の気持ちを無視して先の未来まで決められてしまって、どうしても納得出来なかった。  だから、自分の足で歩いて、世界のことを知ろうと思ったのよ。  本の中だけじゃなくて、自分でみて、自分で感じて、それから自分がどうするべきなのかを考えようって思ったの」  こんなに自分の気持ちを打ち明けたのは、幼い頃からお世話係をしてくれている年の近いエマニアだけだろう。  不思議な心地だった、ここまではっきりと包み隠さず気持ちを打ち明けられたのは。
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