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私を見れる?
「美真菜(みまな)」
その日、俺は呼び出された、学校の屋上の上に。
美真菜は不治の病に冒されていた。
それが手術によって回復したのだ。だから学校に行くことが出来たんだが、どうやら何か俺に話があるらしい。屋上に俺を呼んだ。
しかし、それはおかしい。そもそも屋上は鍵が閉まっていて開かないはず。
それを指摘したら「いいから、大丈夫」と美真菜は言った。
屋上の鍵は開いていた。いや、これは開いていたというより、鍵が無理矢理外れている。どういうことだ、無理矢理開けたということだ、これは。そして今、俺は屋上にいる。
「もうすっかり具合は良くなったんじゃないか?」
俺がそう言っても美真菜はなぜか浮かない顔をしている。まるで何かを押さえ込むように腕を組んで、自分自身をだきしめている。
「よかったじゃないか」
何かを誤魔化すようにそう言うと、美真菜は静かにかぶりを振った。
「ううん、実はね……」
ずるっ
それは服が、いや体に貼り付いたものを脱ぐような、例えば皮を脱ぐような音が俺の鼓膜の中に鳴り響いた。
そこに現れたのは、大きな目玉だった。頭の部分に大きな目玉が二つ。
そして、ざんばらと髪が広がりそこからも目がギョロギョロと見開く。
そこから体全身が目に飛び込んで来るも、全身が火事になったかのように黒焦げのような姿になっている。そこから一気におびただしい量の目玉が敷き詰められている。思わず息をのんでしまった。
「私、だめだったの……医者には人工的に皮を作ってもらって、人間の状態を少しだけ維持する状態することが出来ているけど、もう無理なの。ねえ、こんな私を見ることが出来る?」
「……できるよ」
「え……」
「出来るに決まってんだろ、誰だと思ってんだ? 俺を」
すると美真菜は雨粒のように目を大きくして、雨粒のように涙を流し始めた。
体中に目があるから涙が洪水のように流れてきて、水たまりが出来ていた。
「ありがとう……ありがとう……」
おいおい、そんなに泣くなよ。泣くほど嬉しいことじゃないだろ。
俺とお前の仲なんだからさ。
「幹人(みきと)くん、ありがとう」
そう言って美真菜はその姿のまま俺に飛び込んできた。
涙と血が混ざって鉄の味がした。良いんだ、こいつはどんな姿でも
美真菜なんだから。
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