音喰らいマイケル

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音喰らいマイケル

 地球に当たり前のように異星人がやってくるようになって、早数百年が過ぎていた。  正確には、“地球に異星人が来ていること”が認識されるようになってから数百年と言うべきか。 『ハイ?……異星人ですカ?そんなの、千年くらい前からバンバンこの星にやってきてますヨ?』  初めてメディアのインタビューを受け、地上波に登場した異星人は全身が紫色だった。スポンジの板みたいな体に、ちっちゃな黒い目が三つついていて、ニョロニョロとした触手のようなものを生やす口を持っている。  彼は、地球人にとってはびっくり仰天な事実をあっさりと語ってみせたのだった。 『こんな水も緑も豊富な惑星、異星人が見逃すはずないじゃありませんカ。地球人たちの科学技術では、我々の来訪を捉えることができかったというだけの話でしょウ。みなさんにとって幸運だったのは、地球を訪れる異星人の多くが我々のような観光目的の異星人だったということですネ。中には、侵略戦争を仕掛けて他の星を乗っ取るのが趣味、みたいな質の悪い輩も多くおりますのデ……』  彼らいわく、我々の星が異星人を認識していないにも関わらず無事だったのは、要するに運が良かったから、レベルの話であったらしい。インタビュアーの女性も、それをテレビで見ていた一般人たちも冷や汗をかいたのは間違いあるまい。この頃には、この異星人が言うことが強ち大袈裟でも何でも無いということが、世界中に充分周知された後であったからである。  アメリカを始めとした先進諸国は、早々に結論を出していた。自分達からすると異星人達がやたらめったらと無許可で地球に来るのは不法入国もいいところなのだが、そもそも彼らがその気になれば地球のレーダーなんぞ簡単に掻い潜れる技術を持っているのが問題なのである。  インタビューに答えた異星人の話が本当ならば、現在地球が無事なのは“運が良くてたまたま厄介な星の奴らに目をつけられなかった”からに他ならない。それを防ぐためには、地球人も同じ技術を身につける他ないのである。  異星人たちと友好を深め、あわよくば彼らから最新鋭のテクノロジーを学ぼう。そして、地球全体の防衛力を高めよう。  金銭面や設備面の問題はあったが、これに関しては先進諸国の意見は一致していたのである。勿論、厄介事は他国に押し付けつつ、できれば異星人の技術を独り占めしたいと思っている国も何カ国かはあっただろうが。
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