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「おもろい情報ゲットしたで!」
大学の食堂にて。そんな事を友人が言ってきたのは、一週間ほど過ぎたある日のことだった。
彼は同じ大学に通う“ブリ”。勿論本名ではない。ブリ料理が好きだという理由からネット上で名乗っているハンドルネームである。時々俺の“ガノンチャンネル”にも協力者として出演してもらっている人物だった。
「何でもな、今、トキマ自動車が異星人と一緒に自動車作ってるんやけどな。その異星人ちゅーのが、物凄い変わり者って話なんや!」
「変わり者?」
「サイバス星人って言って、すんごい乗り物の技術を持ってるんやと。で、地球人に興味持ってくれてな。技術提供するから、一緒に車作りましょーって話になってん」
「聞いたことない異星人だな。まあ、話はありがちだけど」
今時、異星人と一緒になにかを開発する事業なんて掃いて捨てるほどある。それだけ聞けば、何もおかしなことはないのだが。
「サイバス星人っちゅーのはな。ネット情報によるとこう、こう、こんなかんじの異星人や!」
ブリはデザイン科の学生である。手帳にボールペンで、ちょいちょいちょい、と描いてくれたイラストは片手間なものとは思えないほど上手かった。丸いボールのような頭に円柱型の体がついていて、その円柱の後ろに細長い尻尾かついている。にゅるん、とした触手のような形で、さきっちょが三角形になっているアレだ。バイキンマンの尻尾みたいなもの、悪魔の尻尾みたいなもの、といえばイメージもしやすいだろうか。
ボールみたいな形状のものが、どうやら頭であるらしい。やや下の方にすーっと線のような切れ込みが入っている。多分それが口なのだろう。目がどこにあるかはさっぱりわからなかったが。
「こいつが首相官邸に入っていくのを激写した奴がおってな、それで写真がネットに出回ってん。全体的に体の色は白よりの灰色っぽいかんじやったって!」
「いかにも人外って見た目だな。異星人なら珍しくもなんともないけど。……こいつがどう面白いんだ?」
「それがな。こいつが目撃された首相官邸も、こいつと仕事してるトキマ自動車も……何故か、こいつが来てるときに作動させてんねん。消音結界装置」
「んん?」
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