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「え……とミラノ風ドリアとマルゲリータピザ、ポップコーンシュリンプ。あと、エスカルゴで」
店員が去る前に追加でドリンクバーを注文した星宮のファインプレーが霞む程度にはその五文字は俺に衝撃を走らせた。
「えすかるご?」
「ああ、鰄は知らない?教えてやろう!エスカルゴってのは……でんでんむしだ!」
「いや、それは分かるけど。お前それ知ってて頼んだって事は当然食ったことあるんだよな?」
「いや、無い!今日初めて注文した。だってでんでんむしでカタツムリだぞ!一人で注文なんて怖くて出来ない」
星宮は十八番となりつつある頭痛いポーズを披露する事なく、オ◯ルトマ◯アちゃんもびっくりなぐるぐる目をしていたが、強引に此方へと戻す。あと、でんでんむしはカタツムリに決まってるだろ。
「お前正気か?梅雨に紫陽花に群がってるアレだぞ!絶対俺らには早いって」
「大丈夫だ、俺がギブしなければお前らは食わないで済む」
白雪はロシアンルーレットばりの覚悟を決めてたが、一応エスカルゴは養殖のカタツムリ……リンゴマイマイだから中ることは無い。ただ、見た目がまんまカタツムリなだけ。それだけなのにどうしてハードルがこんなに高いのか。皆目見当もつかないが、少なくとも俺は白雪に一匹残さず食してもらいたいと切に思った。
※ ※ ※
事の顛末はあえて語るまでも無い。白雪がハイペースで口に詰め込んでいたが、マイマイの姿を視認した途端再起不能となり、星宮も同様に二匹目で許容量超過。残された俺は気絶することもできずただ、残されたエスカルゴを黙々と食べ進め完食。
はてさて、置物と化した二人をどうしたものか。幸せを逃すとは知りつつも、考える度に溜息が溢れるのだから仕方ない。静寂に包まれた店内に響くカンツォーネがやけに虚しく感じた。
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