スキール音と厨二病とエスカルゴ

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 フリースロー練習を終えモップ掛けをする中、仲の良い先輩がぽつりと溢した一言がきっかけだった。 「……僕なんかがスタメンでいいのかな」  ところてん式というか年功序列制というか。とにかく先輩がスタメンになったのはその類だと度々耳にしたが、それが彼の耳にも入ったのだろう。  わざわざ人の悩みに踏み込む癖は無く至ってノーマルに育った俺は、たしか「いや、そんなことないっすよ」とか適当(気の利いた)な一言で華麗に話を逸らしたと覚えている。  とはいえ、それも一月は前のこと。元来、さほど記憶に自信があるわけでもない俺としては、その辺はあやふやだが、一つだけ確かに思ったことがある。 「俺はそうなりたくない」と。 ※ ※ ※  先輩が引退し蟋蟀(コオロギ)が鳴き始めた頃、俺は近所のスポーツセンターに居た。正確にいえばミニバス経験者二人から指導を受けるためコートで対峙していた。  小学二年からの白雪零(友人)は家の立地が坂の上下ということもあり呼ぶのに申し訳なさは微塵もなかったが、半年とちょっとしか関わっていない星宮匡(部活メイト)——それも、此処(スポーツセンター)から数キロ離れた団地住み——に対しては図太さに定評のある俺も、流石に少しだけ申し訳なさを感じた。
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