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疎に生えた芒が風に靡く度、金木犀の香りが鼻をくすぐる。ふと見やったアスファルトには金平糖の如き橙の花が散っているが、どちらかといえば溢したというのが妥当な気さえしてくる。
「……あ、そだ。俺と白雪は老け顔だからいいとして。鰄はまた女子高生と勘違いされないようにな」
まだ、勘違いされたのは両手両足の指よりは少ないはずだから。そんな、毎回「お姉さん。……こんな時間に外出たら危ないよ」なんて言われてねぇから。
「いや、言うてお前らも老け顔じゃないだろ……」
「少なくとも紬よりは老け顔なんじゃないか?此間職質されたし」
それは誇ることじゃないだろとは思うものの、口に出すのはナンセンス。きっと骨折と同じで特に意味はないけど自慢したくなる男子特有のアレだから。もはや発作と言っても過言ではない。
「え、と……二人揃っててこと?」
「そだぞ。『お兄さんたち今暇?』って婦警さんに聞かれた」
「いや、それ逆ナンだから。職質はもっとなんちゅ〜かアレじゃないの?された事ないから知らないけど」
不毛な会話をする事数分、サイゼリヤに着いた。
「お主らは注文決まったかね?」
「俺は、マルゲリーダピザとポップコーンシュリンプ。あと、ドリンクバー」
週に二回は通っているからメニューは見ないでも注文できる俺カッケェと以前は思っていたが、毎回同じ注文をするせいで店員から「お姉さん、今日もピザと海老ですか?」と言われ枕を濡らしたのは記憶に新しい。
「星宮は?」
「あ〜、ミラノ風ドリアとチキンサラダで」
「んじゃ、ピンポン押すわ」
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