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虎と兎の出会い
顎を掴まれ、真っ直ぐ見つめる瞳。獲物を狙う虎のように鋭い瞳をしており、俺は弱き獲物のように身動きが取れなくなる。
「俺に溺れろ」
短い命令は、まるで虎が飛びかかって来たような衝撃で、逃げる間もなく体に爪が食い込み、深く体に刻まれた感覚に陥る。
次の瞬間には、もう逃げられないと悟っていた。
「はい……分かりました……」
口が勝手に動く。その言葉を聞いたその人は口角を吊り上げ、鋭く光っていた目を細めた。
くっきりとした二重は、ひと睨みすれば気迫に気圧されて身動きが取れなくなり、上がった口角から覗く八重歯は、相手を喰らい殺してしまいそうな程尖っている。
その瞳に見つめられれば、全身が粟立ち、ゾクリと身震いをしてしまう。
──あぁ本当に、あなたは何故そんなにも美しいのだろう
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