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「あれ、絵進んでなくね? 俺邪魔だった?」
いつの間にか虎くんがこちらを見ており、置かれた画板にはせている絵を覗き見ていた。
どう言い訳をしようか。携帯で描いていたと言ったら、見せてくれと言われた時に困る。虎くんを描いていたなど、バレるわけにはいかない。気持ち悪がられるだろうし、最悪嫌われかねない。
「いえ、ちょっと疲れたので、手を休めてました」
「じゃあその間何やってたんだ?」
「何も。ここの景色が好きなので、眺めてました」
「変わった奴だな。まぁいいや、ありがとな」
特に気にしていなかったのか、簡単に納得して、軽い礼と共に出入口の方へと向かっていく。俺はそれに一安心しながら片付け終え、少し遅れて校舎に入った。
昼寝という用事を終えた虎くんはさっさと帰ったのか、階下に下っていく姿も見えなかった。
次会えるのはいつだろう。屋上で出会えた時は、また膝を貸してくれと言われるだろうか。
そう考えると、少しだけ心が踊った。
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