虎と兎の出会い

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 季節は春。温かな日差しが降り注ぎ、時折穏やかな風が吹いては、新緑の芽を出し始めた枝を小さく揺らす。  校舎の屋上で、俺は眼下のグラウンドで部活動に勤しむ生徒を尻目に、画材に鉛筆を滑らせた。  俺の通う高校は、海が近くにある小高い丘の上に建っており、屋上からは住宅地の向こうに海が広がっているのが一望出来る。  とても美しい眺めで、俺はここから見る(きら)びやかな海が好きなのだが、皆慣れ親しんだこの光景に興味が無いのか、この屋上を訪れる者はほぼ居ない。  よって、グラウンドから聞こえてくる部活動の掛け声がぼんやりと聞こえてくるぐらいで、ここには鉛筆と紙が擦れる音がするばかりだ。  顔を上げ、景色を目に焼き付けては鉛筆を滑らせ、キラキラと輝く海を模写していく。  何度となく繰り返すその行為に、画板の紐をかけている首がだるくなり、外して首に手を添えつつ少し後ろに反る。  青き空と目が合い、開放感に少し頬を緩ませつつ、深呼吸をしながら目を瞑る。  とても心地がいい。静かで温かくて、このまま眠ってしまいたいぐらいだ。
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