虎と兎の出会い

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「あの、喧嘩した女の子、追いかけなくていいんですか?」  いらない世話かもしれないが、先程の出て行き方を見れば、相手はかなり怒っていたようだし、彼女なら仲直りをしたほうがいいのではないだろうか。 「必要ねぇよ。どうせもう話すこともないし」  しかし、そんな俺の考えとは裏腹に、当人は何でもないように答える。 「別れ話でもしてたんですか?」  俺は好奇心に駆られるまま、話しやすい雰囲気に流されるように問いかける。  初対面の人にこれだけ踏み込んだ質問をするのは初めてだった。何故だか、虎くんがどんな人なのか、とても気になる。 「別に彼女じゃねぇから。昼寝するのに枕として呼んだら、俺の携帯勝手に見て勝手に怒っただけだし」 「どうして怒ったんですか?」 「女とやり取りしてるって。彼女面すんなって言ったら頬殴られたわ。自分は手ぇ出されたらキレるくせに、直ぐ手ぇ出すんだからマジでうぜぇ」  どうやら、先程の衝撃音は頬を叩かれた音だったらしい。虎くんの頬は少しだけ赤くなっており、それなりの力で叩かれたことが分かる。
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