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今のやり取りから察するに、虎くんはきっとモテるのだろう。これだけ綺麗な顔立ちをしていれば女子も放っておかないだろう。
ただ、二人きりでこの状態でいれば、自分は彼女だと勘違いしてもおかしくないかもしれない。自分は男だからそんな勘違いをすることは無いが、この状態に特別感を抱く人は多いのではないだろうか。
それでも虎くんにとって、膝枕というものは、本当に枕としか捉えていないのだろう。そうでなければ、初対面の俺を枕にしようだなんて、考えるはずがない。
そんなことを考えつつ、俺はその赤みを帯びた頬に手を滑らせた。その行動は無意識であり、痛そうだなと思った時には手が伸びていた。
俺の手が触れる感覚に、それまで瞑られていた濃く長いまつ毛が羽ばたくように持ち上がり、鋭さを取り戻した瞳で見つめられ、手を引っ込めて身を固くする。
「何?」
「ごめんなさい。痛そうだったので、つい……」
「あぁ、叩かれたとこ? 赤くなってる?」
一瞬食い殺されるような恐怖を感じたが、またしてもそれは直ぐに柔らかくなり、俺も少しだけ肩の力を抜く。きっと、自分のペースを乱されるのが嫌いなのだろう。睡眠の邪魔をしたら、それこそ食い殺されるかもしれない。
「少しだけ。腫れてはなさそうですが」
「そか。俺眠たくなってきたから寝るわ。帰る時起こして」
そう言って再び目を瞑るので、邪魔しないように大人しくしていれば、程なくして穏やかな呼吸が一定のリズムを刻み始めた。
疲れていたのだろうか。俺は紙に描くことは辞め、ポッケに仕舞っていた携帯を取りだして、イラストアプリを立ち上げた。
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