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絵が描ければデジタルでもアナログでもいいし、画板はそれなりに大きいので、睡眠を邪魔してあの瞳に睨まれるぐらいなら手軽なデジタルで構わない。
そんな思いから携帯でいつものように手近なものを模写し始めたが、やはり虎くんの存在が気になり、ついには手を止めて穏やかに眠る美しい顔立ちを眺める。
春の温かな日差しに照らされながら、一定の呼吸のリズムを刻むその姿は、春虎という名前そのもので、とても気持ちよさそうだ。虎の日向ぼっこもこんな感じなのだろうなと思うと、途端に可愛く見え、口角が少しだけ緩む。
その美しさは目を奪われるものがあり、この情景を切り取りたくなった。
先程立ち上げたアプリで、日向ぼっこをする虎の姿を描き始める。画面にタッチペンを滑らせ、視線を落として穏やかな寝顔を眺めては描きこんでいく。
画面を拡大したり縮小したりしながら、俺は夢中になって虎くんの姿を描いていた。細かく描けば描くほど、虎くんの小さな特徴が見え、どんどん惹き込まれていく。
こんなにも興味が湧き、目が離せなくなるのは、海のような輝きを持ち合わせながら、森の似合う神秘的な虎のような姿も持ち合わせているからだろうか。不思議な魅力が俺の目を惹き付けて離そうとしてくれない。
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