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桜の花が咲く頃に
「へえぇ、ユイは茶道部に入ったのかい」
よほど意外だったのか、おばあちゃんはそう言って目を丸くした。
「うん」
わたしはそう言って目の前にあったお饅頭をパクリと食べた。中学時代の三年間はずっとバレーボールをやっていたから、高校でもバレーボールをすると思っていたのだろう。
別にバレーボールが嫌いになったわけじゃない。いまでも好きだ。ただ、気がついてしまったのだ。自分の限界に。
158センチ――。
女子とはいえ、170センチ台がざらにいる。このハンデははっきり言って大きい。
一応リベロなんてポジションもある。ボールを拾いまくる守備専門のポジションだ。
でもリベロはあまり好きじゃない。なんだか、あなたは小さいから拾うの専門ね、と言われてるような気がするからだ。大事なポジションだっていうのはわかってるんだけどね。
そんなわけで高校に入ったのを機に、わたしはバレーボールを辞めた。
いままでさんざん体を動かしてきたから、今度はもうちょっと落ち着いたことをしよう――と言うのは後からつけた言い訳みたいなもので、本当は親友の楓が言った一言。
「スポーツばっかやってると彼氏できないよ」
たしかにわたしには彼氏がいない。それが全部部活のせいだとは言わないけど、体育会系の部活はハードだ。遊んでるヒマなんかない。体を動かすのは好きだけど、貴重な青春時代を部活一本に絞るのもどうかと思うんだよね。
わたしだって人並みに彼氏をつくって高校生活をエンジョイしたい。スポーツは部活じゃなくてもできるわけだし。
そんなわけでわたしは文化系の部活に入ることに決めたのだった。
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