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お茶会当日。
わたしは結局おばあちゃんの着物を着なかった。友達や先輩たちが落ち着いた着物を着るというので、わたしもレンタルで借りてきた着物を着て参加したのだ。
お茶会が終わり、おばあちゃんに何と言って話そうかと思っているうちにひと月が過ぎてしまった。
おばあちゃんが倒れたと言う知らせを受けたのはそれから半月ほど経ったときだった。
わたしのせいだ。
わたしが送ってくれた着物を着てあげなかったからおばあちゃんが倒れてしまったんだ。
わたしは泣いた。謝りに行こう。行っておばあちゃんに謝らなくちゃ。
でも……会ってなんて言えばいいんだろ……。
こわかった。電話越しに聞いたおばあちゃんの楽しそうな声。そんなおばあちゃんに何と言えばいいのか見つからない。
いや、わかってはいるのだ。わかってはいるのだけど動けないのだ。負い目はわたしの心を縛り、身動きできなくなったわたしはおばあちゃんの回復をひたすら祈ることしかできなかった。
それから間もなくしておばあちゃんはなくなった。
どうしようもない喪失感と罪悪感がわたしを押しつぶした。
お葬式にはとても行けなかった。ひとりで部屋に閉じこもって一日中泣いた。
どうして着物を着てあげなかったのだろう……。
自分を責めたけど、しかし、すべてはもう手遅れだった。おばあちゃんに謝る機会は永遠に失われてしまったのだから。
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