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「おじいちゃん」
わたしは改札から出てきたおじいちゃんを見つけると声をかけた。
「迎えに来てくれたのかい」
「うん」
「ありがとう」
にっこりと微笑んだおじいちゃんと二人で商店街を抜け、うちまでの道のりを歩く。
話し好きだったおばあちゃんとは対照的におじいちゃんはあまりしゃべらない。声をかけなければ、このまま家に着いてしまう。わたしは意を決して言ってみた。
「おじいちゃん、ちょっと寄り道してもいい?」
おじいちゃんはわたしの顔を見ると、いいよ、と言った。
「この先に公園があるんだけど、そこに寄りたいの」
「わかった」
その小さな公園にはわたしたち二人しかいなかった。
こんな冬の日にわざわざ公園にくるようなもの好きな人はいないようだ。傾きかけた陽がまだ残るベンチに座る。二月の風は冷たい。
「おじいちゃん……」
わたしの声におじいちゃんが振り向いた。
「……おばあちゃんがいなくなって寂しい?」
最後の方は聞き取れるかどうかという小さな声になってしまった。おじいちゃんは顔をしわだらけにした。少し笑ったようだ。
「そりゃあ寂しいなあ」
「そうだよね」
当たり前のことだ。長年連れ添ったパートナーをなくしたのだ。寂しくないはずがないじゃないか。何を訊いてるんだ、と自分に嫌気が差す。
おじいちゃんはわたしが話すのを待っている。言わなきゃ。
「……あのね、おじいちゃん。おばあちゃんがなくなったの、わたしのせいなんだ」
絞り出すようにそう言った。
おじいちゃんはとくに驚くわけでもなくわたしを見つめていた。そしてしばらくしてから聞いた。
「どうしてユイのせいなんだい」
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