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書斎に戻り鉛筆をとった。だがどうにも手が震えて上手く書けないのだ。埃だろうか、目まで霞んできてしまった。これじゃあ英語の文字は書けない。和訳でもいいだろうか。あの子が好きと言った、サビの歌詞の和訳でも。
タイトルは日本語で「ピアスを開けたの。」
愛し合っていたカップルの男が女の元を離れ、荒みきってしまった女は男への想いを叫ぶ、という内容だ。振られたのか、はたまた別の理由で離れるのかまでは歌われていないが、英語なのもあってそういうわからない所を想像できるのが良いとあの子と語り合っていたのを思い出す。
「ねえ、こっちの茂みにきてさ、一緒に踊ろうよ。一緒にもっと奥まで行こう。もっと深く。もっと深く。」
まだあのたいやき屋はやっているのだろうか。三連休だし、明日は土曜日。久しぶりにたいやきを食べにでも地元へ帰ろうか。実家にも長らく帰っていない気がする。
私は鉛筆を置き、メモ帳を閉じた。辺りは静まり返って、部屋には西陽が射し込む。聴こえるのはただ、かけっぱなしにされた音楽ばかりであった。
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