届かぬ思い

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*** 「ただいま」  主人が帰ってきた。その顔には疲れが滲んでいる。それなのに主人は両手を広げて、 「ん?」  と言ってくれる。  主人の下がり眉の顔を見て、私は彼の胸に顔を埋めて今日初めて涙を流した。それからは子供のように泣きじゃくった。 「きつかったな。悪いな、仕事で一緒にいてやれなくて」  私は頭を横に振る。 「もっと早く帰ってくるようにするから」 「修治さん、ごめんね。いつも私のことばかり考えてくれてありがとう」 「幸代だって僕のために会社の仕事手伝ってくれてるじゃないか。夫婦なんだから持ちつ持たれつでいいんだよ」  優しい優しい修治さん。  ありがたい。感謝でいっぱいになる。同時に罪悪感もちくちくと心を刺す。私は主人の願いを叶えられない。主人は心も体も健やかな人と結婚した方が良かったのではないか。毎日のように考える。 「幸代?」 「私でごめん。子供を産んであげられなくてごめん」 「それはもう決めたことじゃないか。僕が幸代を選んだんだよ? 幸代がそんなこと言う必要はない。馬鹿だな」  主人は私を抱く手に力を込めた。  ますます涙が止まらなくなった。
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