届かぬ思い

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***  寝れば明日は来る。  時計の針が時を刻む音と主人の寝息の音だけが聞こえる。  静かだ。  なのに私の脳内は今も騒がしい。  母は眠れただろうか。    母には母の苦労があるとは思う。  でも、それを理解したら母を憎めなくなる。  憎めなくなったら今までの私があまりにも不憫だ。  ネグレクトはされなかった。私は生きている。  暴力は振るわれなかった。物理的には。  だからと言って全て我慢して受け入れろと言うのか。  届かない私の思い。生まれることのなかった主人と私の子供。母を恨むには十分な気がするのは私だけなのだろうか。  子供が欲しくなかったわけではない。愛する人の子供はきっと可愛かったに違いない。それでも生まれることのなかった子供を守るほうが私には重要だった。  今は母を許すことはできない。  母が年を取り、死ぬ間際はどうだろう。  少しは悲しむことができるだろうか。  いや、半分は悲しめる自分であれますように。  私は苦い笑いをかみ殺す。    こんなことを思う時点で私も母にとって良い子供ではないのだろう。  ごめんね。  世界一愛しい人とこの世で最も憎い人に心で謝って目を閉じる。  大丈夫。明日は月曜日。薬は要らない。  早く明日になればいい。           了    
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