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白色の箱庭。
見回しても塵一つすら落ちていない欠落した世界。ここには俺達二人以外の存在が無い。
無音という静けさの中、俺達は空間に充満している酸素を有効活用して、呼吸と会話を行っていた。
「君がこの世界を滅ぼしたのか?」
「うん、そうだよ」
目の前で体育座りしている少女は、髪も瞳も真っ白で、空間と調和したような異物感を放っていた。そして、美しい。語彙という人間の叡智では、到底その魅力を語り潰すことはできないだろう。世界を滅ぼした張本人かもしれないが、そのことを蚊帳の外に置ける位に。
「どうしてそう思ったの?」
「君がやったなら、強く当たれると思ったからだ。見た目もそれっぽいし」
「怒りをぶつけたいから、私のせいにしたいの?」
「ああそうだ。まあ本当か嘘かは関係ないんだ。そして君が何者でも、僕には関係ない」
僕が眠りから覚めた時、既に世界は終わっていた。今の状況を『世界終末前』と僕は形容しているが、それは本当にそうだからではなく、僕がそう思いたいからだ。僕が残されたただ一人の人類として世界を再建する。そんな夢物語を未だに捨てきれていないから。甘えた思考だと頬を抓る。痛い。
「なあ、お前が世界を破壊したんなら、どうして俺を生かしたんだ?」
「猫の気紛れ」
「お前だけは助けるぞニャーニャーってか?笑えねえよ」
「笑ってほしくて言った訳でも無いけどね」
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