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少女は苦笑して、深呼吸をした。たった一つの動作で心が揺れ動く。俺の中には恐怖心も当然あるが、少女に抱く神秘感の方が勝っていた。
この子になら、人生の幕引きを任せても良かった。
既に死人同然の人生を送ることが確定してるのだ。何日生きれるかも分からない。いつどんな死因で死のうが大差は無い。
「貴方は、もし世界が続いていたら何をしたかったの?」
「……破壊者の目の前で言うのも、何だか虚しいな」
俺は空中に視線を移しながら、今までの半生を思い返す。ブラックな仕事に身を浸して想像力をあらかた失ったのか、在り来りで平凡な発想しか出てこなかった。捻って捻って、絞り出す。
「……温かい紅茶でも飲んで、家でゆっくりしてたかったな」
「それって夢なの?何時でも叶えられそうな陳腐な夢だね」
「今はもう、無理だけどな」
わざと嫌味ったらしく言うと、何故か少女はしゅんとした。人並みの罪悪感があるのか?いや、今更どうにもなるまい。
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