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「……じゃあ、その夢叶えてみよっか!」
「は?」
少女はニヒヒと意地悪い笑顔を見せて、黒色のコップに並々と注がれた、熱気を伴った液体を僕に渡した。
「はい、温かい紅茶!」
「……家でゆっくりしたいって条件は?」
軽やかな冗句で場を和ませようと努力したが、言葉とは裏腹に俺は深い困惑に陥っていた。掌から、紅茶が出てきた?それって、もしかすると……?
「人間は出さないよ?」
「……お見通しってか?」
「私の力は、万能で強力なの。私にも色々と事情があるし、諦めてね」
俺の思考を読んだ、万能で強力な力を持った破壊者は、無音の空間で「熱いっ!?」と唇を火傷していた。
「まあ食料とか飲料とかは出してあげるから、感謝するのが良いぞ……!」
無い顎髭をいじって偉い人アピールをしている。俺は最初神経毒やら青酸カリやら有毒な物質が溶け込んでいるかと訝しんが、別に死んでも誰も悲しまないかと一気に飲み干した。喉奥が熱を浴びて赤く腫れそうだった。
「わっ、紅茶ってもっとお淑やかに飲む物かと思ったよ!」
馬鹿舌なので味の相違は分からないが、少なくとも今までで一番味がした。苦味が鼻をツーンと貫いて、思わず咳き込んだ。
「夢、一つ叶った?」
「……ああ、お陰で最高で最悪の気分だよ」
コップを少女に返して、白色の世界に身を委ねる。寝る格好になると少しづつ微睡みが出てきた。欠伸が出る。
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