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言葉が優しい吐息となって耳に入り込んでくる。瞼が閉じようとしている。目から涙が出てくる。……欠伸のせいで出たのだ。絶対に。心など許してはいない。
「泣き虫でちゅねー」
「……君は、何がしたいんだ?君は俺に、何を求めてるんだ?君は俺に━━━━━」
「はい悪い口はチャックでちゅよー!」
口を強制的に腕力で閉じられる。鼻息が荒くなる。意識が、遠のいていく。
「んー!」
「ごめんね、騙すようなことしちゃって」
白色の世界からの酸素供給が途絶えて、窒息が始まった。これを『睡眠』と形容するとは、流石破壊者と言うべきだろうか。
手足をバタバタと動かして離脱を試みるが、何も効果は得られない。それどころか嫋やかな掌に力が余計伝わりやすくなって、さらに意識を圧迫される。視界がぐらつく。
どうしていきなり、こんな暴挙を……
「常識に惑わされたらダメでちゅからね?」
「……あ」
「因为彼岸是梦幻世界……ってね!なんかかっこいいでしょ!って、もう聞こえてないかあ。あはは」
俺はやっと理解した。猫の気紛れ?そんな可愛らしいものなんかじゃない。こいつはただ毛並みが純白で美しいだけの、化け猫だ。
そんな恨み節を言葉にはできずに、意識は強制的に閉じられた。
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