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「最後の部屋にはフラッシュバンを投げて無能力化、それから撃って!」
ここが最後の難所だった。ただフラッシュバンを投げ込めばいいというわけではない。
フラッシュバンの投擲にはコツがあり、下手を打つと自分もその強い閃光で無能力化してしまう。
椿にとろは絶妙な位置からフラッシュバンを投げ込む……ちょうどその船室の壁に一度四十五度の角度で当てて、それから船室のなかで炸裂するように。その直後、にとろは室内の敵をやはり頭を狙って撃ち抜いた。
「あとはダッシュ! 赤く丸が描かれているところがゴールよ!」
小佐野隊長は、いや、〈アンティセプティック・チーム〉の全員が興奮した。
椿にとろがゴールを走り抜けた。撃ち漏らし無しで、しかも来栖治子のニ分十一秒と同じタイムなのだ。
タイ記録なの!? と治子が驚いている。
「タイ記録といえばそうだけど、ミリ秒単位でほんのわずか、来栖さんの記録より早いのよ……記録更新ね」
〈アンティセプティック・チーム〉の皆が声にならない声をあげた。治子の記録は何度も何度も繰り返しての記録なだけに、初見でこの記録はありえないほどの数値だった。
「これは……うちの部隊に喜んでお招きしないといけないわね……」
何度もCQBテストの椿にとろの映像を見ながら、小佐野隊長は考えていた。これまでは、小佐野隊長と六花鐘碧砂、そして葉桐薫と来栖治子がいってみればペア、あるいは性別こそ違うものの、相棒を作り、軍事作戦などに加わってきた。
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