10人が本棚に入れています
本棚に追加
序章
恐怖で倒れた人。転がった遺体。地面に空いた穴。散らばった水甕の破片……。
「ったく、誰が片付けると思ってンの? あ、下僕のユーエンか! アハハ!」
セイランは大口を開けて豪快に笑った。
雪のような白い肌には紅が差し、大きな目はうつろで、半分閉じている。
「おい、下僕!」
「えっ!?」
ユーエンは後を振り返った。
だけれども自分以外、誰もいない。
「おい! おまえだろ!? ユーエン!」
「は、はいっ!?」
「……じゃねぇだろ?! はい だろ!」
美人が怒ると怖い。口調も相まってすごい迫力だ。ユーエンは縮み上がって震えた。
「すみません!!!」
でも、そんなことでセイランへの思いは変わらない。好きだからどんなセイランも受け入れる。
(そうだ! そうやって、下僕から這い上がってみせる……!)
最初のコメントを投稿しよう!