序章

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序章

 恐怖で倒れた人。転がった遺体。地面に空いた穴。散らばった水甕の破片……。 「ったく、誰が片付けると思ってンの? あ、下僕のユーエンか! アハハ!」  セイランは大口を開けて豪快に笑った。    雪のような白い肌には紅が差し、大きな目はうつろで、半分閉じている。 「おい、下僕!」 「えっ!?」  ユーエンは後を振り返った。  だけれども自分以外、誰もいない。 「おい! おまえだろ!? ユーエン!」 「は、はいっ!?」 「……じゃねぇだろ?! はい だろ!」  美人が怒ると怖い。口調も相まってすごい迫力だ。ユーエンは縮み上がって震えた。 「すみません!!!」  でも、そんなことでセイランへの思いは変わらない。好きだからどんなセイランも受け入れる。 (そうだ! そうやって、下僕から這い上がってみせる……!)
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