見ないで

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見ないで

なんだか視線を感じる。 大学に入って新しい生活にも慣れてきた頃、ふとそんなことを思った。最初は気のせいかな、なんて思ってあんま深くは考えなかったんだけど。 あまりにもあからさまに、視線を感じるなんて生ぬるい表現じゃ足りなくなってきているのだ。確実に私を見ている。なんなら目が合うし、直接声はかけてこない癖にやたら私の周りをうろうろしている。 この大学はあまり大きくなくて、同じ学部ならそこそこ顔を知ってる人が多い。繋がりも親密で、だからこそ鬱陶しいと思ってしまう。最近やたらとふられる恋バナも、彼氏作りなよ!とかっていう友達もなんかとっても胡散臭い。 そもそも私、彼と話したことあったかなぁ…私だって鈍感なつもりはない。だから、コレがそういった視線であることもわかっているつもりだ。でも心当たりがない。 一度だけグループで一緒に出掛けたことはある。女子の方が比率も高かった。だから私はずっと女子と話していたはず。彼と特別何かあったわけじゃないのに。 焦ったい。もやもやする。彼と同じ空間にいるだけで視線が絡みついてくる。加えて周りの人々から好奇の目を向けられる。 最近は策略めいたものも感じる。周りが彼に協力的らしく本人以外から好意を仄めかされたり、グループ分けで誘導されたり。狡猾なのは人として必要なスキルかも知れないけど、私は全部気づいてるのに。 正直に言ってしまうとストレスなんだ。 告白とかされちゃう前にどうにか諦めさせたい。何かアプローチされるにしてもどうせ1人で来る訳ないし、女子みたいに群れてじゃないと行動も起こせない人。周りを広く巻き込むことで断りにくくされてる気がする。 恋愛に絡んだ時点で大学内の狭いコミュニティの人間関係が拗れてしまうのは確実。私たちはまだ一年。あと三年もあるのにそんなのはごめんだ。 彼とその周辺の子供っぽいところが、言ってしまえば中学生男子のようなノリが苦手だ。ただのクラスメイトとしてならいいんだけど、精神年齢がどうしても下に見えてしまって巻き込まれたくはない。 だからね、つまり。彼と合う人はいるはずよ。でもそれは私じゃない。だから、私を見るのをやめて欲しい。 お願いだから早く諦めて。
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