音のない部屋で

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 自分の狭い部屋で過ごす毎日は酷く疲れる。  学校からは休学と退学のどちらかに決めてほしいと言われているけど、それには何も答えていない。まだしばらく猶予があるからそれまでは黙っているつもりだけど、それにももう限界がある。  だから今こうして考えようとしているのだけど、マイナス方向の重い感情が邪魔をする。  もう彼と話し始める前の自分には戻れない。私の感情は薄いわけではなくて奥深くに沈み込んでいたらしい。    だからここまで重く感じるのだろう。  それが辛いけど、いつかは彼に感謝する時が来ると思う。来て欲しいと思いながら半ば強制的に良いイメージを頭に描く。  私をからかって笑う彼。その顔ははっきり覚えているのに、私がどう答えていたのか思い出せなかった。  彼がいなくなったショックで楽しいことは全部忘れたのかもしれない。 依存症状態の自分が嫌になる。  プラスの感情を取り戻せる日はいつになるだろう。ずっとこのままでは押し潰されてしまう。  どうすれば抜け出せるのかが分からない。考えること自体に疲れてきた私は机に突っ伏した。    *    いつの間にか眠っていたようで、顔を上げたときにはすっかり日が暮れていた。時計を止めているので時間は分からない。 カーテンを閉めて部屋の電気を点けながら、さっきまで見ていた夢をぼんやりと振り返る。    夢には彼が出てきた。場所は小学校の校庭。私が小学生で彼は高校生だった。いつまでも逆上がりができない私に「できる必要ないけど頑張って」と言った。「僕はもう何もできないけど」と酷く後ろ向きな言葉も加えた。  これは実際の彼ではなくて、私が勝手に描いた彼だ。その彼に私は「ずるい」と返していた。 「何もしなくて良いとか。私も出来れば何もしたくない」  そう答えた私に彼は寂しそうに笑って 「そんなこと言わないで僕の分まで何か見つけてやってみてよ」  と返してきた。 「……分かった。そこまで言うなら」  私が渋々と答えてその夢は途切れた。
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