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「卒業したんだしいいんじゃないの。18なら成人だし」
何だか色々と考えていそうな真冬に夕華ははっぱをかけるつもりで言う。
「そうだけど」
「もう了解したんでしょ」
煮え切らない返答に苦笑いの夕華。
大学の時から考えすぎなくらい考えてそれでも答えが出ないことがありまくるこの友人をどこまでも心配になるのだ。
「なんか流れで…。でも私今まで誰とも付き合ったこともないのに8つも年下の…」
「まあね」
「ついこの間まで生徒で…」
問題はそこか、と夕華は思った。
家庭環境から真冬は体裁を気にしすぎる傾向があるのだ。
「真冬は今どう思ってるの?生徒のときから結構気にかけてたでしょ」
「すごく頑張ってて、応援したいって思って。本当はずっと気になってた…。でも私は教師だからそんなこと思うのダメだって思ってて……。でも今は、というか今も…好きだって言われて嬉しいと思う自分がいる」
言いにくそうにコップの縁をなぞりながら真冬の声が徐々に小さくなる。
そんな真冬を見守るような目で見て、ふっと夕華が笑う。
夕華からしたら赤飯でも炊きたい気分だ。
今の今まで真冬の口から恋愛のれの話も聞いたことがなかったのだから。
「まあ、でも私から見ても真冬はちゃんと教師と生徒の距離感保ってたよ」
「夕華には色々バレてるかも、と思ってたんだけど」
「犬飼の気持ちは知ってた。真冬に懐いているの見ててすぐわかるし。あっちも隠す気もなかったみたいだけど」
「1年の時に1度告白されたんだけど、断ってからはちゃんと生徒としてしか接してこなかったから、諦めたものだと思ってたの」
「あー…、ごめん。それ私だわ…」
夕華は思い出したというように天を仰ぐ。
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