霹靂

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 それからはあっという間だった。  病室に残された1冊のノート。これは父親が遺したもの。  そこには入院する前に家を解約したことや持ち物は全て処分していることなどが書かれてあり、亡くなった後の要望も書かれていた。  直葬したのち、永代供養でお願いします、と。  遺された者が困らないように全て調べて連絡先や流れなどが事細かく書かれている。それを見た颯人は、父親とはこういう人だったと思い出しては悲しげではあるが笑みをこぼす。  全て終わったのは2日後の夜。  父親が書き記した通りに事を運び、ホテルに戻ったのが先ほどだ。  颯人は部屋で手の中にある少し大きめのお守りを見つめる。そこには父親と母親の結婚指輪が入っている。生前の父親が唯一大事に持っていたもの。 「オレ……一人になったんだな………」  ベッドの縁に座り窓の外をぼんやりと眺めながらぽつりと零す颯人。それを聞いた真冬はたまらず颯人に抱き着いた。 「私が傍にいるよ。犬飼くんの傍に、ずっといる……」  自分の膝の上に座る真冬の背に腕を回し、その首筋に顔を埋める。 「真冬の休み、ごめん……」  長期休暇を取ったもの、それももう明日まで。  だが、真冬はその言葉にふるふると首を振る。休みを取っていて良かったと思っているほどだ。  こんな時に颯人を一人にせずに済んでよかったと。  真冬は抱きしめる力を込める。
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