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「うおっ!やるじゃん颯人!」
満面の笑みで目の前の子どもの頭をぐしゃぐしゃと撫でる明里。その手には100点の算数の答案用紙が握られている。
目の前の少年は髪がぐしゃぐしゃになろうと嬉しそうに笑っている。
女性はさらにくしゃっと髪撫でてから、キッチンに立つ男に目を向ける。
「センセイ、見てよほら。颯人、また算数100点だってさ」
テストを目の前に掲げ、キッチンでコーヒーを入れる颯人の父に明るくよく通る声で言う。
「ほ、本当だ。颯人…すごいな」
男性にそう言われ颯人は照れた笑みになる。
「いやあ、颯人の頭の良さはセンセイ似だな。さすが大学で算数教えているだけあってセンセイ賢いもんな」
「……数学だが、まあいいか……。だが、颯人の明るいところや、う、運動神経は君に似ている」
「あはは!確かに!センセイ、コミュ障だし運動できないもんなー」
「……まあ、事実だ」
怒ると怖いが、明るく常に笑顔が絶えない母親。
口数は少ないが優しい雰囲気を持つ父親。
笑い声に包まれた楽しい毎日だった。
それは颯人に残る幸せな記憶ーーー。
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