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「……ん…」
柔らかい感触を頬に感じた颯人が目を開けると、いつもとは逆で真冬に抱きしめられている状態。すぐ目の前は真冬の胸元。それは温かくて柔らかくて、そこにすりっと頬をする寄せる。
その姿は昨日の情事のまま。二人とも衣服を身に着けていない。
直接肌から感じられるトクトクと規則正しくなる心音が心地よくて颯人はそっと目を閉じる。
力強く聞こえるそれはとても安心する音。生きていると感じられる確かな音だった。
その時ふと自分の頬に流れるものに気づきそっと触れると、そこにあったのは涙。理由はわからないが、何か懐かしい夢を見ていた気もする。
ぐいっと涙を拭った颯人はゆっくりと体を起こす。
夏とは言えエアコンが効いている部屋で自分を抱きしめていた真冬の肩が布団から出ているのを見て、そっと布団を掛けなおすと今度は自分が真冬を抱きしめる。
隣で動いても微動だにせず眠る真冬に無茶をさせてしまったと、空いた手でゆっくりと髪を梳く。
昨日はあった、ぽっかりと穴が開いたような感覚が今はもうない。無茶をしたのに、それでも何も言わず全てを受け入れてくれる存在がこの腕の中にいる。それはずっと共に生きていきたいと思える存在。
「傍にいてくれてありがとう、真冬。……愛してる………」
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