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「え?どういう…?」
「あまりにも犬飼が真冬のこと好きだっていうオーラ出すからちょっと警告を。距離が近すぎると犬飼と真冬どちらに批判がいくかわかるよねって」
「そんなことが」
「まあでもちょっと意外だったんだ。ちゃんとそれを忠実に守って生徒でなくなる卒業式まで待ったってことが。本気で真冬のこと大事にしたいって思ってるんだね」
夕華の言葉を聞きながら真冬は顔を赤くする。
颯人が生徒として距離を置いたときは教師としてほっとした一面、若いから一時の感情だったのか、と残念に思っていたことも事実だ。
「犬飼って喧嘩ばっかりしてた頃、狂犬とか呼ばれてたみたいね。でも真冬に懐きだして近づく男子とかに威嚇してるの見てたら番犬に見えた」
当時を思い出してか、夕華がくつくつと笑う。
それに対して真冬はあきれた顔をする。
「番犬って…。というかそんな威嚇とかしていないでしょ」
「真冬は鈍感だからなあ…。あとあいつ、教頭にも食って掛かってたしね」
「そうなの?」
真冬にとってはまたしても初耳だ。
「教頭って真冬にセクハラまがいのことしてたでしょ。あれ犬飼が見てて怒って…」
「でも、問題になってないよね」
教頭に何かしたら颯人もただでは済まない。
だが、そんな話は出てきていなかったと真冬は記憶をたどる。
「ま、教頭もセクハラで騒がれたらまずいと思ったんでしょ。犬飼のことは不問にしてた。犬飼も他の生徒からの目撃情報を集めたりして、あいつ単純かと思いきや結構頭回るよね」
「大学へ行きたいって言ってから勉強教えることになったんだけど、すごい吸収力だった。たぶんもともと頭はいいと思う。理数なんてすぐに教えられなくなったし。それで志望校にも合格するし、本当尊敬しちゃう…」
うっすらと頬を上気させる真冬を見て、夕華はふっと笑った。
「なんだ。もう答えは出てるんじゃない」
そう言って夕華は優し気な視線を真冬に向けた。
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