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同級生たちはみんな大なり小なり、自分のやりたいことや好きなことに打ち込んだりしていた。それを眩しくも羨ましくも思う自分がいた。
中学で好きなアニメや漫画を禁止されてからというもの、自分の中に好きなものはなかった。ただ毎日知識を頭に入れることだけに必死だった。
そうして気づいたのはこの先どうすればいいかもわからないこと。
大学には入った。そしてそのまま安定した職に就くのだろう。
だけどそれからは?
レールに沿ってばかりいた真冬には真っ暗な未来しか見えなかった。だがもうレールはない。そこからはどこへ行けばいいのかもわからない。
この時になって初めて、真冬は家族から離れたいと、離れなければいけないと思った。このままではこの先進むべき道もわからずただ空虚に人生を過ごしてしまうだけだと思ったのだ。
だから真冬は両親には何も相談せず、実家から遠い場所への就職を決め、半ば出ていく形で実家を出た。もう一度自分の人生を再構築するために。
何でもよかった。好きだったアニメや漫画をまた観だした。
それは楽しかったし、生活に潤いをもたらしてくれた。
だけども長年にわたり母親に言われてきたことを崩すこともできずにいた。隙を見せるな。常に誰かに見られていると思え。
それはいつどこで誰に見られても恥ずかしくないように。そんな母親の教育理念からのものだった。
だから真冬は外では常に気を張り、緊張した面持ちにでしか人と接することができなかった。それは家を出てから数年経っても変わることはなかった。
就職してしばらくはお盆と正月には実家に顔を出していた。
実家でも常に気を張っていた。もうずっとそこは真冬の安らげる場所ですらなかった。
実家に帰る度、母は真冬に苦言を呈する。
遠くへ行ったことに対して。
公務員ではあるものの地方であるがゆえの不満。
生まれ育ったそこは、真冬にとってただただ窮屈で苦しいだけの場所になっていた。
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