334人が本棚に入れています
本棚に追加
真冬が玄関を開けると、一人の男性が立っていた。
「久しぶり」
「……兄さん……どうして、ここに……?」
真冬の兄、雪人である。真冬とは6つ年が離れており、真冬が中学にあがると同時に家を出て遠方の大学へ入学したため、かなり疎遠になっていた存在でもある。
現状、真冬はこの実の兄のことは東京で医師になっているという事しか知らない。
「真冬が帰ってくるって聞いて。たまたま休みだったから、ね」
そう言いながら、視線は自然と隣にいる颯人へと。
「あのっ!初めましてっ、犬飼颯人と言います!」
その視線を受けて颯人はばっと頭を下げる。
「小堀雪人です」
男性ながらも綺麗な顔つきをしているため、無表情になると真冬のように冷たい印象を与える雪人。視線を颯人から真冬に移し、真冬のゆったりとした服装を見てそしてふっくらしたお腹を見つめる。
その視線に気づきはしたが真冬は特に何を言うでもなく、また雪人もそれについて言及することなく視線をふいっと逸らした。
「父さんも母さんも和室にいるから」
そう言うとスリッパを二人分用意し、長い廊下を進んでいく。
真冬と颯人は二人目を合わせ、覚悟をするように軽く頷きあった。
最初のコメントを投稿しよう!